「小説 デミング賞」書評
日経ビジネス2001年5月28日号
日本型品質管理の病巣を描く
全社的品質管理(TQC)という手法が、日本製品の質を世界のトップレベ ルに押し上げてきたのは紛れもない事実である。そして、1951年に創設された「デミング賞」こそ、全社的・総合的な品質管理を実施する優良企業(または個人)だけに授与される最高の栄誉とされてきた。
しかし、そんなTQCも日本型経営の弱体化とともに綻びを見せ始めている。本書は、業績悪化に直面した自動車会社を舞台に、TQCに固執し集団主義を強要する経営権力と、それに反発し捨て身で風土改革に取り組む一社員の戦いを描いた小説である。TQCの推進団体である日本科学技術連盟は96年以降、TQCを時代に適合した全社的品質経営(TQM)に置き換えるべしとしている。しかし、「個を無視した"全社一丸体制"」「品質ならぬ人質管理」など、主人公が直面する生々しい実態は旧態依然とした姿で根強く生き残っていると著者は指摘する。事実、主人公のモデルは実在するという。舞台そのものも史実に沿って描き出されている。サラリーマンが選ぷべき道は組織への忠誠か、個人の尊厳か。そんな視点で読み解くのも面白い。■トップページに戻る■