新機軸導入、GIGA25,25トン車市場に先制打
93年11月25日、自動車の総重量規制の上限が20トンから25トンに緩和された。
トラックメーカー4社のシェアは長年固定している。だが、25トントラックの登場で大型トラックの市場が拡大すれば、業界池図は塗り替えられる可能性が高い。トラックメーカーの猛烈な開発レースが始まった。
最大の勝負どころは、積載量をどれだけアップできるか。今までの最大クラスだった総重量20トン車は積載量は11トン。総重量規制緩和による5トンの増加分をそのまま積載量に反映できれば、積載量は16トンとなる。積載量4トンの中型トラックの4台分に相当、輸送効率は格段に向上する。
一年後、凱歌はいすゞ自動車にあがった。他社に先駆け11月28日に発売した「GIGA25」は最大積載量15.75トンと「純増」を実現したのだ。6×2方式実現への難関
欧米の25トントラックの主流は前一軸・後ろ二軸のうち後ろ二軸が駆動する6×4方式だ。
一方、既存の日本の大型トラックの主流は後ろ二軸のうち前軸のみ駆動する6×2方式だった。6×2方式のメリットは駆動軸が少ない分、軽量化=積載量アップが可能となり、燃料の消費量も少ないことだ。
トラックの最大のユーザーである運送業界の業況は低迷が続き、価格選好性は非常に強い。94年排ガス規制への対応というコストアップ要因を抱えているトラックメーカーは、各社とも6×2方式を成立させ、価格を抑えるべく知恵を絞った。
「GIGA25」は6×2方式を25トントラックに導入することに初めて成功した。6×4方式採用車に比べ積載量は0.4〜0.5トン増加する一方、燃費は3〜5%低減された。
が、その実現には大きな障害があった。6×2方式のトラックの場合、駆動軸へ十分に荷重することで積み荷ゼロの空車時でもスリップを起こさないように設計されている。
ところが、一本の駆動軸への荷重は安全性確保、路面保護のため10トンまでとの規制に加え、隣接軸重の規制も新設。1.3メートル以上1.8メートル未満の距離で隣接する車軸の場合、荷重の合計は19トンまでとされた。そのため駆動軸と後後軸に同じ荷重を配分することになり、空車時には駆動軸に十分な荷重がかからないという問題が生じた。
欧州の一部では、空軍時に後輪をハネ上げて6×2方式を可能にする例もあるが、日本での採用は難しいと思われた。
つれて、「最初は6×2はあきらめざるをえないと思った」(篠原彰・いすゞ自動車商品企画室主管)。しかし低価格・積載量増加を望むユーザーの意向を考えると6×2の採用は不可欠だ。
この難問を解決したのがいすゞが開発した空車発進駆動補助装置「キックドライブ」である。
空車時には自動的に気圧でエアチャンバーを駆動軸に押しつけ、駆動軸重を増加させる。十分な荷重により駆動力を確保、スリップを防止する。坂道や滑りやすい路面での発進にも心配はなくなった。大型シェア奪回の切り札
25トントラックは98年までは通行できる道路が限られるため、どの程度まで需要が伸びるかは予断を許さない。しかし、いすゞは旧20トン車の市場の40%は25トン車に移行すると予想、シェア30%を目指す
従来、いすゞの得意分野は小型トラックであり、大型は手薄だった。25トントラック登場は巻き返しの千載一過の好磯だ。
「GIG25」はキャブの高剛性化など安全性を強化したうえ、リターダ(電磁式ブレーキ)を標準装備するが、価格は旧20トン車の一割増程度に抑制。新市場争奪戦に向け、インパクト十分の先制パンチとなった。 (西村豪太記者)