会社をどう変えたらいいのか
 
 
私は「企業風土」というテーマを持って、会社に勤めながら30年の間、研究と実践を続けてまいりました。そして人が育ち、業績を伸ばせるかどうかは企業風土のありようと密接に関係していることがわかってきました。
本稿では企業風土改革のポイントをいくつか紹介したいと思います。
 まず「変化を受け入れる風土」のトヨタ自動車と「社員の創造力を引き出す風土」のホンダの事例を紹介します。
 

 トヨタ自動車では仕事の定義を「作業プラス改善」と決めています。従って作業だけやっている人は仕事の半分しかやっていないことになります。ですから社員は改善のテーマを真剣に探します。そして改善テーマに関わる当事者だけで「自主研」という小グループをつくって自主的に改善を進めていきます。
トヨタ自動車には「今日の生産、明日の経営」という考え方があります。つまり日常の生産活動はすべて課長以下の現場にいる社員が担います。一方、部長の仕事は明日の経営に関わる改革のテーマを見つけて実行していくことです。このような企業風土が創業以来、遺伝子として伝承されてきております。この企業風土がトヨタ自動車はなぜ変わり続けるのかをひも解く重要なカギであると私は捉えております。 
 
 ホンダには社員の創造力を引き出す風土があります。創造を産み出していくためには異質な社員の組み合わせが必要です。
右肩上がりの時代、多くの企業では競って多数の金太郎飴のような同質の社員を採用しました。そして社員教育ではその同質性をさらに高めていきました。
一方、右肩上がりの時代であっても意識して異質な人材を採用してきたのがホンダ、トヨタ、ソニーなど少数の企業でした。企業経営は創造であり、創造性は同質社員の組み合わせからは育たないという経営者の考え方があったからです。
ホンダでは異質の社員をそれぞれ「月ロケット」、「神様」、「たぬき」、「変人」とに分けてシンボリックに表現しています。「月ロケット」は科学的思考ができる人、「神様」はひらめき、直観力がある人、「たぬき」は人をのせながら集団をまとめていく人、「変人」はある思いにこだわってとことんやり抜く人ということです。ホンダでは新製品開発プロジェクトでは意識的にこの4ッつのタイプの人材を組み合わせてチームを編成します。
 
 多くの企業では社員が自分自身の特性、個性を把握できていないし、会社もそれを求めていません。長年、「皆と同じようにしていたほうが楽だ」という企業風土の中で仕事をしてきたからです。「五体不満足」の著者、乙武洋匡さんが「人は皆、違って当たり前」と言うように、最近では社員も自分の特性、個性を再発見して創造的に生きていくことを望むようになりました。
 会社を変えるためのもっとも大事なポイントは、社員を自立させることです。多くの企業では社員を自立させるどころか依存させているのが現状です。上役の指示、命令を従順にこなしているだけの社員はますます会社への依存度を強めていきます。自立しているかどうかは「自分の頭で考え、自分の心で判断し行動しているか」という基準で計るといいでしょう。一方、依存度の高い人は「他人の頭で考えてもらって、他人の心で判断してもらって、言われた通りに行動して、失敗したら自分の責任ではない」という意識を持っています。依存度の高い社員が集まっている会社は社長のワンマン体制という悪循環から抜け出せないようになります。自立度が高い社員が自主的に仕事をする企業は中央集権型ではなく自律分散型ですから変化に対応しやすくなります。社員を自立させるためには、社員が上役に何か相談してきたときに、「自分の頭で考えていいと思ったらやりなさい」と言い続けることです。
 
 最後に企業風土を変えるためにもっとも効果の上がる方法を二つお伝えします。
まず社長自身が「会社をどのように変えたいのか」「どのような会社にしたいのか」「どのような社員に育って欲しいのか」などを考え抜いて、わかりやすいメッセージにすることです。そのメッセージを文書、または直接対話で繰り返し伝えていきます。社員に「変わりなさい」という時に、「私も変わるから、皆も一緒に変わろう」と言って、自分が変わる姿を見せていくのが最高のメッセージになります。社員に「変わりなさい」といいながら、社長が変わらない会社で風土改革が成功したためしはありません。
 もう一つは世間で評判の良い模範となるような会社を社員に見せることです。どこの会社でも「たこつぼ」のようになっていますので、社員は広い世間を見ていないのです。世間には社員のお客様への気配りが行き届いていたり、現場での整理整頓が徹底しているなど優れた特長を持った会社があります。そのような会社を探して訪問し現場をよく見た上で、その会社の経営者、社員と対話をするのです。私はこの方法を数々の企業で実践した結果、これが何よりの社員教育だと思うようになりました。(JA大阪信連「調査月報」平成14年6月号)



    

■トップページに戻る■