徳川時代の15人の為政者には名君、並の殿様、バカ殿様が存在した。世にいう2:6:2の法則である。現代の企業でも名社長、並の社長、バカ社長が2:6:2の比率で出現している。私は36年のサラリーマン生活を通じて、この現実をいたいほど見てきた。実際のところ社長は世襲で選ばれる。自分のお眼鏡にかなった人を次期社長に選ぶ。バカ社長はバカ社長を選びやすいのだ。あの有名なN証券ではバカ社長が2代続いた。前社長は社長を退いた後も実権を握り経営を支配していたが、そのうちに悪事が世間にばれてしまった。新聞で有名になった血液製剤会社では3人のバカ社長が続き、反社会的な事件を起こして、会社の名前が消滅した。このうな例は枚挙に暇がない。新聞に出ないだけだ。
バカ社長がトップに立つと会社の体質、風土が汚染される。「おかしいことをおかしい」と言えない雰囲気が社内に醸し出されるのだ。そして世間で非常識なことが、社内では常識としてまかり通るようになる。そして会社はますます「たこ壷」化していく。
私はいすゞ自動車に在職中に「体質を治す運動」に取り組んだ。それは上司の指示を受けてやったのではない。会社でやっていることのバカさ加減にあきれて行動を起こしたのである。それは「体質改革」というより一種の「革命」だったといえるかもしれない。それも会社という体制内の革命である。なぜそれが可能であったかを考えるとき、それは社長のキャパシティーの広さにあった。現在の激変期に、社長が会社の進む方向を大きく変えようとする時、会社の中では新しい波と古い波とが大きくぶつかりあうものだ。私は古い波を「右手の法則」新しい波を「左手の原則」という例えで表現するようにしている。
1990年までの右肩上がりの時代、殆どの会社は利き腕の「右手」だけで経営してきた。『右手』を言い表すキーワードは「効率」「統制」「メジャー」「義務教育」「金太郎」などである。『左手』のキーワードは「創造」「自由」「マイナー」「塾」「桃太郎」などである。
1990年までの右肩上がりの時代、日本の会社は挙社一致体制のもと「右手」だけで経営ができた。これからの時代、会社は改革を進めるために『右手』に加えて『左手』の存在が必要になるはずだ。つまり『右手』と『左手』がバランスよく共生することである。これが会社の中で「革命」を実現するための、現実的な方法であろう。この「革命」が可能な条件を創れるかどうかは社長次第である。またこのことを意識しながら経営をすることが「裸の王様」への道を避ける最良の方法である。