読む漢方薬 第4回
「出会い」
●「袖すり合うも他生の縁」という言い伝えがあります。「多少の縁」ではなくて「他生の縁」なのですね。
人生は枝分かれの連続といっていいでしょう。あなたはどのような両親から生まれましたか。どこの学校で何を勉強してきましたか。どのような先生、お友達に出会いましたか。どのようなきっかけでイオンで働くようになりましたか。今、どこに住んでいますか。思い出してみればいくつかの分かれ道があったはずです。その枝分かれのときに誰か他人が関わっていませんでしたか。枝分かれには「出会い」が深く関わっているというのが、私が体験から学んだことです。
●私は子どものころ、近所でも評判の悪ガキでした。家で勉強などしたこともなく、小学校では劣等生でした。中学に入ってから、私を一人前に扱ってくれる英語の先生と出会いました。その先生のファンになった私は、英語を熱心に勉強するようになったのです。「英語だけはできる」という気持ちが次第に自信につながっていきました。その後、私は定時制高校(夜間高校)で学びました。夜間高校では男子は菓子職人、大工見習い、郵便配達など、女子は看護婦見習い、タイピスト、給仕など、みんな働きながら、学校に通ってきます。この定時制高校で出会った友人たちのお陰で、私は出会いの大切さを学んだような気がします。それからも学友、先生、会社の同僚、取引先の方々、いろいろな会合などで様々な出会いがあって、私の人生は枝分かれしていきました。
●平成15年6月上旬、イオン労働組合の「拡大同志塾」が富士聖ヨハネ学園(山梨県忍野村)で開催されました。富士聖ヨハネ学園は知的障害者(児)160人が生活している福祉施設です。「拡大同志塾」は「同志塾」の1期生、2期生、3期生の中から希望者が参加して、一緒に異体験をするという試みです。「拡大同志塾」は過去に2回開いており、第1回はイエローハットの中部物流センターで、第2回は国府津の水中塾で開催されました。今回は3回目です。
新妻健治さん(中央執行委員長)をはじめとする14人の参加者は雨森園長の説明を聞いたあと、2人づつがペアになって生活棟に入って知的障害者(児)の方々と交流したり、食事をしたりしました。知的障害者(児)とは言葉を使わないで意思を通じ合わせなければなりません。夜は忍野八海にある民宿「富士之家」で学園の職員7人と交流しました。翌日は再び学園を訪問、障害者(児)の方々とゲームをしたり、雨谷忍さん(事業担当執行委員)が制作した「とべないホタル」という手作り紙芝居を演じて楽しみました。
富士聖ヨハネ学園の園長、雨森探丹生さんは夜間高校で一緒に学んだ同級生でした。その後、雨森さんは早稲田大学(夜間)に進学して心理学を学びました。
大学3年生になった雨森さんが課外実習で福島県の福祉施設を訪れたときに谷昌恒さんに出会いました。谷昌恒さんは後に北海道の遠軽にある家庭学校(児童自立支援施設)の校長として生涯を送った人です。谷昌恒さんの福祉にかける思いに感動した雨森さんは福祉の道に進む決断をしました。
その後、東京都の心理職という職員になり福祉事務所などで働いてきました。雨森さんと久ぶりに再会したのは、今から15年前のことでした。雨森さんは東京都練馬区にある福祉高等学校の先生をしていました。私は雨森さんとはまったく違う企業戦士の道を歩んでいましたが、何か共感しあうところがありました。その後、雨森さんは富士聖ヨハネ学園の福祉の現場に身をおくようになり、現在に至っています。私の友人である雨森さんとのご縁が活かされて、イオン労働組合の皆様が貴重な体験ができたことを私は嬉しく思っています。
●今、地球上には64億人の人が住んでいるといわれています。私たちは生涯でそのうちの何人くらいの人たちと出会うのでしょうか。私は数年前、出会いの棚卸しをしてみたことがあります。出会った人が10,000人、顔と名前を覚えている人が1,000人、友達になった人が100 人ほどでした。あなたはそれぞれ何人くらいになるのでしょうか。
私が50歳を超えた頃、学生時代の友人と先生、社会に出てから出会った思い出のある人たち66人を1ヶ月かけて訪ねたことがあります。この「再会の旅」をしたことで私は時代の変化、そして人生の味わいに気づきました。この体験から「同志塾」の塾生には「旧友と再会する」という課題を実行していただいております。
私自身、これからも過去の出会いを大切にし、新しい出会いを求める旅を続けていきます。日本国内はもちろん、世界各地の人たちと出会い、いろいろな文化に触れていくことを楽しんでいきたいと思っています。
●将棋の名人だった米長邦雄さんが書いた「人間における運の研究」(致知出版社)からの言葉です。「出会いの機会は誰にも公平にある。この公平な機会をどのような質と程度の出会いとしてとらえられるかは、求める気持ちの質と程度にかかっているということででしょう。必ずその人の実力相応の出会いになっている。いい出会いを持ちたかったら自分の実力を磨き、高めることです。」
●今、私がいちばん心がけていることはよい出会いを分かち合うことです。特に50歳を過ぎてからたくさんの素晴らしい出会いがありました。今までに培ってきた出会いを多くの人たちと分かち合いたいと思っています。
コンピューターの用語にWWWというのがありますね。ワールドワイドウエッブの略で「世界に広がる蜘蛛の糸」という意味です。人は誰でも出会いのウエッブ(蜘蛛の糸)を持っています。そのウエッブ(蜘蛛の糸)をお互いにつなげていくと人生は面白く展開していくようです。 (連載完了)
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