読む漢方薬 第3回 テーマ 「異体験」
◯「サラリーマン(ウーマン)は猫化するのです」
猫は飼われている家を中心とした狭い範囲から外へは出ようとしませんが、サラリーマンの生態も同じです。家と会社の間を往復するだけ。休日の時間の過ごし方も決まっています。行動がパターン化する。すると何が起きるか。毎日、顔を合わせる人が同じになります。毎日、見る風景も同じになる。その結果、意識が固定化していきます。
すなわちマンネリズムに陥って、新しい発想ができなくなってしまうのです。
ですから、ときどき猫道から外れて、いつもとは違う景色を見てください。そして知らない世界の人に会って、新鮮な情報を得てください。そうすると自然に意識の新陳代謝が促進されます。
意識して猫道から外れることを私は「異体験」といっています。
今回の「読む漢方」は「異体験」をするためのヒントの紹介です。
◯「頭で考えても身体が動かない」ということがよくあります。
「水中塾」では意識と身体のつながりを体感し、意識したことを実行できるようにするための格好の場です。「水中塾」では競争のための泳ぎではなく、穏やかな心でゆったり泳ぐこと、そして水の柔らかさを感じ水と一体化することを学びます。
「水中塾」で大切にしているプログラムの一つに「自然体」があります。完全に力を抜かないと「自然体」のポーズはできません。この体験をすると私たちが日頃、どれだけ肩に力を入れて生活しているかを実感します。
水中塾で学んだいくつかのことは日常生活にも応用できます。自動車の運転の仕方が穏やかになったり、ストレッチングを毎日、実行するようになった人もいます。身体が硬くなっていては水中塾が目指すイルカのような柔らかな泳ぎができないからです。
◯世の中には「捨てる人」、「捨てない人」、「拾う人」がいるのです。
私は長い間、「捨てる人」でした。数年前、「捨てる人」から「捨てない人」に変身しました。今は「拾う人」にチャレンジしています。
変わるきっかけは公園のトイレ掃除でした。ある会合に参加したらトイレ掃除が行事に組み込まれていたのです。へっぴり腰で何とか便器を磨き上げました。恥ずかしい話ですが、それまでは掃除に関心がありませんでした。家でも会社でも掃除は人まかせだったのです。ところが不思議なことに「掃除に学ぶ会」に参加し続けるうちに意識が変わっていきました。掃除というのは不思議な効用があって、整理整頓や美化などの感度が良くなってきます。そして自発の心が育まれてくるような気がするのです。
「掃除に学ぶ会」の仲間たちは「掃除をするようになってから、煙草の吸い殻を捨てなくなった」と言います。道路に落ちている吸い殻を拾ってみると「捨てる人」がいかに多いかを実感します。煙草を吸う人の大多数は「捨てる人」で「捨てない人」は少ないのです。この掃除を体験した人たちは「捨てる(汚す)人」から「捨てない(汚さない)人」に変わっていくから不思議です。この「捨てない人」の中からごく少数の「拾う(きれいにする)人」が生まれくるのです。
◯ 「踊る阿呆に見る阿呆、わたしゃ寝たきりになられんよ」というかけ声とともに私は阿波踊りの渦の中で夢中で踊っていました。
8月13日、暑い夏の夕暮れのことです。場所は阿波踊りの晴れ舞台、徳島市役所前のメイン会場です。私にとって阿波踊りは初めての体験です。
なぜ、私が阿波踊りに参加できたのか、それにはワケがあります。ある会合で知り合った徳島県阿南市に住んでいる方から「ボランティアで阿波踊りに参加しませんか」というお誘いがありました。東京から参加する身体障害者を介護をしながら一緒に来てくれないか、というのです。身体障害者が寝たきりにならないで社会参加ができるようにという願いを込めた「ねたきりになら連」というボランティアグループのあることも初めて知りました。このボランティアの誘いは私にとってまたとない異体験のチャンスだと思い、二つ返事でOKしました。
8月12日、羽田空港で右半身マヒの男性と対面しました。その男性はバリバリのビジネスマンでしたが、55歳の時に脳卒中に見舞われました。以来14年の間、車椅子の生活をしています。いよいよ2泊3日の介護の旅が始まりました。
徳島市に着くと参加者の交流会、阿波踊りの練習、観光など行事が盛りだくさんです。車椅子での参加者が70人、お世話するボランティア140人が全国から集まってきています。たまたま同室でご緑のあった身体障害者やボランティアからさまざまな人生の話を聞くことができました。私は車椅子を押すことが初めてです.飛行機への搭乗、バスヘの乗降、トイレや入浴の介助、あっちこっちへの移動を汗びっしょりになりながら体験しました。障害を持った人と交流すると思わぬことに気づかされます。
「異体験」の中でも、ボランティアは特に猫道外しに有効なようです。。
◯ 最近、なぜか主婦体験にチャレンジする男性が多くなりました。料理の本の材料表と作り方を参考にしながら、お料理をつくって、食べ終わったら、あと片付けをします。さらに洗濯や掃除なども楽しみながらやっています。奥さんへの思いやりの気持ちが芽生えたり、日々の生活に関心を持つようになったり、効果はてきめんです。
スポーツの試合を観戦したり、音楽会や演劇など文化に触れることは楽しい異体験です。
まずは日常のわずかな時間を上手に使って異体験をしてみてください。そしてときどき思いきって遠出の旅行をしたり、ボランティアなどをして日常から脱却してみましょう。家族と一緒に行う異体験は思い出の一ページになります。そして異体験を習慣化できたら、あなたは生涯にわたって成長し続けるはずです。 (第3回完)
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