
読む漢方薬 第1回
● 漢方薬は一つの病気だけではなくいろいろな病状を治癒させる効果があります。
万能薬ということですね。もちろん健康な人の体質改善を促進する効果もあります。
漢方薬には即効性はありません。ゆっくり効いてくるのです。
新たに連載する「読む漢方薬」では心と身体が元気になるような話題を取り上げられたらいいなと思っています。今回のテーマは「原点に戻ろう」です。
● 上甲晃さん(志ネットワーク代表、元松下政経塾副塾長)に久しぶりにお会いしました。上甲晃さんは生前の松下幸之助さんから「経営の勘所」「人間洞察」「人を育てるコツ」の直伝を受けた方です。私も上甲さんにお会いするたびに、松下幸之助さんの思想の一端を学んでいます。松下幸之助さんは「生きていくために知識は必要だけれど、智恵のほうがもっと大切」ということを常々語っていました。そして晩年、私財を投じて知恵を磨く道場、松下政経塾を創ったのです。松下政経塾では「自学自修」「万事研修」を教育の基本方針としました。ですから松下政経塾には先生と呼ばれる人は一人もいません。智恵を磨くためには現場、現実と向き合って体験を重ねるしかないからです。「我以外、万物皆我師」ですから、毎日の出来事、出会う人、すべてから学ぶことができますね。「教わる」「与えてもらう」ではなく、「学ぶ」「求める」という姿勢があれば人間は生涯、成長し続けるに違いありません。
● 先日、岡田卓也名誉会長にインタビューさせていただく機会がありました。岡田卓也さんのお話から、経営や人材育成に関する大切な考え方を学びました。その一つは先人の知恵を受け継ぐことの大切さです。200年続いた岡田家にはいくつかの家訓がありました。その家訓のひとつに「上げに儲けるな、下げに儲けよ」がありました。
バブルは上げの時代でした。今になって頭を冷やして振り返ってみれば、バブルの時代はまさに狂気の時代でした。岡田さんは、当時、日本国中を覆ったバブルの風潮の中で「これをやれば儲かる」という場面にいくつも遭遇したのですが、この家訓の教えを拠り所に経営判断をしていました。おかげで大きな負債を抱えずにすんだといいます。
● 最近、「商人道 江戸しぐさの知恵袋」(越川禮子著
講談社新書)という本に出会いました。「江戸しぐさ」は江戸時代、庶民の間に存在していた共生、繁栄のための知恵の集積です。明治維新による新政府は江戸時代の文化の伝承を認めなかったため、一部の語り部が口伝で「江戸しぐさ」を受け継いできました。越川禮子さんは「江戸しぐさ」の中にこそ、次世代に伝える文化があると考え、暗黙知としての「江戸しぐさ」を書籍に表しました。「江戸しぐさ」の一つひとつを手繰っていくと、未来につながる先人の知恵に触れることができます。「江戸しぐさ」の根底には、生まれたことに感謝し、相手を人間として尊重し、思いやる心、生きるために大事な物や事柄をみんなで共有しようとする思想があります。「江戸しぐさ」では次の二つのことを強く戒めています。第一に、いばること。第二に戒めたのは「稚児もどり」といって幼稚なしぐさをすることです。
最近では大人でも幼稚なしぐさをする人をよく見かけますね。
「江戸しぐさ」の一つに「三つ心、六つ躾、九つ言葉、十二文(ふみ)、十五理(ことわり)で末決まる」という言い伝えがあります。これは人間の脳の発達段階に応じて教育をしようという庶民の知恵です。「江戸しぐさ」は知恵であって知識ではありません。そして「しぐさ」ですから、クセ(習慣)として身体に染み込ませていきました。
● 商売の原点はお客さまを向いて仕事をすることです。最近、いくつかの有名企業が不祥事を起こしました。事業部長や支店長がお客様や生活者を見ないで、上を向いて仕事をするから、世間の常識に反することをやって、その結果、かけがえのない信用まで失ってしまいました。
お客さまとの対話をとことん追求しているのがジャスコ東浦支店の店長、高橋晋さんです。高橋晋さんは「なんとかしてよ店長さん」「どう答えるの店長さん」(かんき出版)という2冊の本を表しました。先日、東浦支店に高橋晋さんを訪ねて、今から13年前、会社の方針になかったのになぜ「公開」を始めたのか、その経緯をお伺いしました。
高橋さんはお店を繁栄させるためにはお客さまから教えていただくのがいちばんの近道だと考えていました。そして次第に「お客さまご意見カード」を活用した双方向対話を実施してみたいという思いを深めていきました。横手店の店長だったあるとき会社のトップの一人から次のようなお話がありました。「私たちの地域に対する責任は重大である。店長一人でできなかったら、自分の信奉者を二人作ろう。その二人が次の信奉者を作れば四人になる。少しづつ増やしていけば、やがて店は変わる。店が変わればお客さまが変わる。お客さまが変われば、地域が変わっていく。その地域を変える最初の人間が店長である。そのたった一人の店長になってみませんか」
高橋さんはこのメッセージを聴いて、ご意見承りカードと店長の回答を公開することに踏み切りました。
ピータードラッカーは次のように言っています。「池に変革の石を最初に投げるのは一人である。そして波紋が広がっていく」
高橋さんはその最初の石を投げました。
● 高橋耕一さんがノーベル科学賞を受賞しました。高橋さんの生き方、そして言動は私たちに元気を与えてくれます。田中さんは三代続いた商家で育ちました。次は母親の春江さんの言葉です。「人の下手(したて)に出るから商売は広がる。上に立って欲しいとは思わなかった。勉強もそこそこできればいい。自分でしている限りは口出しはしませんでした。争って10番のものが1、2番になってもね」 (第1回完)