変わり方のワザ、教えます

第3回  依存から自立へ、同質から個性へ

1 自立するということ
以前、私は自立するどころか会社と上役にべったり依存した会社人間でした。
50歳を過ぎた頃、社長に手紙を書いて風土改革の実施を会社に提案、推進責任者になりました。会社の任命によってではなく、自分で提案して始めた仕事ですから、難題が押し寄せても放り出すわけにはいきません。壁にぶつかるたびに「どのように壁を乗り越えたらいいのか」を真剣に考え抜きました。考え抜くと知恵やアイデアが出てくるものです。そして協力してくれた仲間と共に難関を突破していきました。
私はこの時期に自立した人間に変わったように思います。そして「依存している」のと「自立している」のでは、毎日の生活の充実感がまったく違うことに気がつきました。

2 自分の頭で考え、心で判断する
その後、私は「自立しているかどうかの程度」を判定するために次のような基準をつくりました。その基準とは「自分の頭で考え、自分の心で判断し行動しているか」というものです。「依存」は「他人の頭で考えてもらって、他人の心で判断してもらって、言われた通りに行動する」ということになりますね。「頭で考える」というのは理性(左脳)の働きで、「心で判断する」というのは感性(右脳)の働きだということも学びました。私の体験では頭の働きを活発にするには考えるだけでは不十分で、考え抜くことがコツです。特定のテーマを見つけて徹底して考え抜く習慣をつけると知恵とアイデアが湧き出てきます。ぜひ試してみてください。
「心で判断する」はとても大切な感覚で、理屈が通っていることでも心が拒絶反応をする場合は、心の判断に従ったほうが間違うことが少ないという体験をしてきました。
偏差値教育の影響なのでしょうか、私は「左脳肥大、右脳縮小」になっていましたが、感性の大切さに気づいてからは、音楽、美術など美しいものに触れるように心がけています。先ほどの基準に照らしてみて、もし「自立度」が低かったら、「自分の頭で考え、自分の心で判断する」を意識して行動してみてください。そうすれば時間がかかっても、必ず自立する方向に向かっていきます。

3 人は皆、違って当たり前
次に個性のことです。私は「五体不満足」を著した乙武洋匡さんの「人は皆、違って当たり前」という考え方が大好きです。人は生まれつき一人ひとり違った才能や個性があるのですが、子供から大人になるにつれて「皆と同じ」ような考え方と行動をするようになるようです。私自身は若い頃から思いついたらすぐに行動するタイプでした。行動が早いと成功することもあるのですが、失敗をすることもあります。失敗はありましたが、大切なことをたくさん学ぶことができました。
よく長所、短所といいますね。私は長所と短所は表裏一体ではないかと思うことがあります。積極的な人は慎重さに欠ける、気さくな人は軽い部分がある、といった具合です。
人は誰でも「誇れる長所、得意なこと」がありますね。自分自身の特長がよくわからなかったら、幼友達や恩師を訪問してみましょう。あなたのよいところをきっと教えてくれるはずです。そしてあなたの個性を再確認し、それをまるごと受け入れましょう。
そして次に自分とは違った他人の考え方や行動もまるごと認めていきましょう。
「人は皆、違って当たり前」を意識して他人をありのまま認めるよう努力していくと人間関係はとても豊かになります。

4 心の距離を近づける
一人ひとり違う個性を持った人がお互いに違いを認めあって仕事をしていくと、職場では「工夫」や「創造」が生まれます。「工夫」や「創造」は人の真似をするのではなく自分たちで考え実行することです。私は仕事、生活、人生の何れも人の真似をするのでなく、自分だけのものを創りたいと考え実践してきました。
お互いの個性を認めあうためには、「心の距離を近づける」ワザを体得する必要があります。
私たちは子供の頃から競争社会に身をおいてきたため、知らず知らずのうちに、背伸びをして自分をよく見せようとするようになっています。また周りの人々の考えや行動に合わせ過ぎて、自分の考えを言わないこともあるでしょう。これが人間関係を窮屈にしているので、これと反対に日頃、考えたこと、感じたことをありのままに伝えておいたほうが周囲から理解してもらえて動きやすいのです。
「ホンネ」と「タテマエ」ということがありますね。私は「タテマエ」の部分を少なくして、「ホンネ」で表現するよう努力しました。このようなことに関心を持ち続けていたところ、ある心理学の先生に出会いました。その先生から私は「自己開示」というワザを教わったのです。「自己開示」というのはありのままの自分を他人に見せながら自分を変えていくことにあります。「自己開示」の簡単な方法は、子供の頃のこと、家族のこと、地域でのこと、好きなこと、余暇の過ごし方、将来の夢などを日頃の付き合いの中で自然体で語ることです。心のドアの把手は人の内側についているといいます。ドアを開けるかどうかは人の意志に委ねられていますから、他人の心のドアをこちらが一方的に開くことはできません。こちらが先に心を開いてこそ、他人も心を開く、そして心の連帯が生まれていくということを実感しました。自分自身をはっきり表現すると、周囲からの風当たりが強くなることがありましたが、その風に鍛えられて私は強くなり、変わることもできました。(第3回完)
 

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