『オープンブック・マネジメント』

ジョン・ケース著  佐藤修訳  ダイヤモンド社 2,400円+税

従業員1人ひとりが経営への「オーナーシップ」と「経営の視点」を持っていたら、企業を取り巻く環境がどのように変わっても、企業は勝ち抜いていけるはずだ。『オープンブック・マネジメント』は「雇われ人意識」から「経営の視点」を持った従業員に変える道筋を具体的に示した本である。「オープンブック・マネジメント」は北米の中堅企業の経営の現場で芽生え、着実に裾野を広げているいくつかの企業の事例から生まれた。基本的なコンセプトは財務諸表を中心とした経営情報を経営者と従業員が分け隔てなく共有して、全員が自律的に考えて行動することである。そのための具体的な内容は本書に譲るが、風土改革をテーマにしている私が興味を持つのは、「会社は経営者のものではなく従業員を含めた皆のものである」という考え方が北米で広がってきているという事実である。終戦を迎えた昭和20年以降、日本企業は各種の経営手法を北米から学んできた。細分化された縦割り組織、トップから第一線までの多重階層構造というタテヨコに分断された組織は「部分最適」を生み出しながらも、右肩上がりの時代にはそれなりの成果を上げることができた。ところが「部分最適」は次第に行き過ぎたものになっていき、「全体不適」を生み出していった。つまり部分での管理を徹底すればするほど「組織力を最大限に発揮する」という本来の目的から遊離していったのである。本書には企業経営の先進国である北米での経営手法の変遷が客観的な見方で描かれている。いま、北米でも日本でも意識の高い企業人は、組織力を最大限に発揮するための経営原理を求め、経営手法の見直しを始めている。最近のベストセラー『トヨタ式最強の経営』(日本経済新聞社)では、トヨタ自動車が独自に創りあげてきた、従業員に「経営マインド」を持たせるための仕組みを紹介している。この本と併せ読んでみると、日本発でも北米発でも経営原理と手法の進化は同じ方向を目指していることがよくわかる。



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