「捨てる人」「拾う人」
昨年の春、いすゞ自動車の社員の呼びかけで「大森を美しくする会」が発足しました。毎月2回、早朝に有志が集まっていすゞ本社の附近や公園の掃除をするのです。私も毎回参加しています。私自身の掃除の初体験は、公園のトイレ掃除でした。水俣市で開かれたある勉強会に参加したらトイレ掃除が行事に組み込まれていたのです。正直言って私はビビリました。でもいまさら逃げるわけにはいきません。やっとのことで大便器を磨き上げました。本当に恥ずかしい話ですが、それまでは掃除に関心がありませんでした。家でも会社でも掃除は人まかせだったのです。ところが不思議なことに掃除に参加し続けるうちに意識が変わっていくのを感じるのです。掃除というのは不思議な効用があって、整理整頓や美化などの感度が良くなってきます。そして自発の心が育まれてくるような気がするのです。
今、この掃除が「日本を美しくする会」という国民運動として全国に広がりつつあります。この会はイエローハットの創業者、鍵山秀三郎氏が40年にわたる掃除の実践から見い出した哲学を恵那市の東海神栄電子工業の田中義人社長が広めるために呼びかけているものです。掃除を体験した仲間たちは「掃除をするようになってから、煙草の吸い殻を捨てなくなった」と口々に言います。掃除をしてみると道路に吸い殻を「捨てる人」が大勢いることに気がつきます。煙草を吸う人のほとんどは「捨てる人」で「捨てない人」はあまりいないようです。この掃除を体験した人たちは、この少数派の「捨てない人」に変わっていくから不思議です。この「捨てない人」の中から「拾う人」も生まれてきます。最近、いすゞ自動車と東京ディズニ−ランドの社員の有志が一緒に、イエロハットの本社で「掃除研修」を体験しました。東京ディズニ−ランドは優れた掃除マニュアルによって掃除が徹底していることで有名な会社です。この掃除研修に参加した社員の呼びかけで、「舞浜を美しくする会」が生まれました。今度は東京ディズニ−ランドの中ではなく、舞浜駅周辺を掃除するのです。そして、掃除を担当する部署の社員だけではなく、いろいろな部門の社員が参加する社員運動として実施されるようになりました。
企業で働く人たちが自主的な地域を通じて「拾う人」に変身していくのを私はとても嬉しく思っています。【賃金事情2月5日号から】

 寄稿文一覧に戻る 

■ トップページに戻る